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ひでの創作集
掌編を中心に書いています。
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俺のハーレム

 二人で酒を飲んだ時、同僚の中村が田中に訊ねた。
「お前は痩せた女がタイプなのか?」
「どうして?」
「この間、庶務のC子をデートに誘って断られてたろう? その前に追いかけてたB子も痩せぎすだった。」
「あのな」田中は同僚に言った。「俺がどんなタイプを好きになろうと、いくら振られようと、お前には関係ない。だろ? ほっといてくれ」
「ほっといてね――確かに俺はただの外野だ。しかし、お前しか眼中にない太目の女もいる」
「太目の女? 営業一課の藤井か?」 
「ああ。彼女をどうするつもりだ。席は離れてるっていうのに、お前の机にコーヒー淹れてきたり、おやつ置いたりしてるのはみんな彼女だ。他にはいない。タイプとして受け付けないなら、はっきり(ノー)を突きつけてやったらどうだ。それが彼女のためだし、ひいてはお前のためだろ」
 田中は中村を見た。
「ひょっとして俺に焼きもち妬いてる?」
「俺が」中村は笑った。「冗談だろ」
「冗談? 真剣だよ。お前と違って内野の話だからな。この際だから言っておくが、俺は彼女に(ノー)を突きつけるつもりなんてまるでない。彼女のことを別に嫌いじゃないんだ。嫁さんにするなら今のところ彼女だと思ってるくらいさ。俺が最初に抱いたのはあの女だし、俺が好きだと行動で示してくれてるのは今のところ彼女だけだしね。しかし、結婚するかどうかは分からんよ。俺は気に入った女はどんどん誘うし、口説き落としていく主義だからね。俺が他のいい女をどんどん手に入れて、情勢が変われば彼女は俺を見向きも・・・いや、去ることになるかもしれない。実際、俺は男女に関係なく、来る者は拒まず去る者は追わない主義だ。今までそうしてきたし、これからもそのつもりでいる。その意味からいうと、俺のハーレムにはまだあいつ一人しかいないってことにもなるな。お前が彼女を好きなら別に奪い取ってもかまわんよ。出来るならの話だけどね。彼女の気持ちを縛り付けるつもりなんてさらさらないんだ。もっとも俺のハーレムったって、ここに入ってくるのは最終的に一人なんだけど、ともかく最後まで手を抜かないで頑張らないといい女は手に入らない――はっははは」


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あるパーティーにて

 A子は夫に伴われてある立ち席パーティーに出席した。宴もたけなわになり、彼女は夫と離れ、女同士で友好を深めた。するうち、夫が少し酔った足取りでA子たちのそばに歩いてきた。
 夫が酒に弱いのは承知している。”うちの人そろそろお開きのようだわ”とA子は笑顔で話しかけようとした。しかし夫は「おい、帰るぞ」と別の女の手を取って背を返そうとするではないか。
 A子はあわてて夫に歩み寄った。それを咎めるように肩を叩いた。
「あなた、何してるの。私はこっちよ」
 夫は怪訝そうに振り向く。まじまじA子の顔を見る。
「するとこの人は・・・これは失礼」
 夫は女の手を離した。額を手で叩いた。
「また、やっちまった」
 A子は夫の間違った相手に深々とお詫びを入れた。足元のおぼつかない夫を支えるようにしてパーティー会場を後にした。

 A子の夫に間違われた女は顔を上気させながらその場所から消えた。
 残った三人の女はクスクス笑いながら今の出来事を話題にしだした。
「ねえ、知ってる?」
 黒縁メガネの女が言った。
「何が?」
「今も聞いたでしょ? Hさんの奥さん間違い、これが初めてじゃないみたいよ」
「酒飲むと奥さんのことがわからなくなるのね?」
「表向きはね」
 女は小さな声になった。
 三人は顔を寄せ合った。
 黒縁メガネの女はちらと間違われた女の方を見た。
「だけどじつは奥さんのお化粧顔とすっぴん顔があまりにかけ離れているというのがもっぱらの噂よ」
 
腕の見せ所
 
 某出版社・女性誌編集部が「女性の精神年齢と肉体年齢の実際」と題した特集を組むことになった。
 有名人やタレント、街角等で道行く人に取材やアンケートを試み、女性たちの精神年齢と肉体年齢のギャップ等について考察しようとの試みだった。
 編集長は提出された企画書を見て、いくつかの項目にチェックを入れ「GO」サインを出した。
 編集部員らは取材やインタビュー、アンケート、簡単な実験等で街へ飛び出した。
 集められたデーターの整理を任されたのは駆け出しのAだった。
「おい」
 先輩の声がした。
 Aは顔を上げた。
「はい」
「データーの整理はまだか? 年齢ギャップを計算するだけだろうが。いつまでかかってるんだ」
「それが・・・」 
 Aは自信なさそうに顔を上げた。
「精神年齢と肉体年齢のギャップについては、数値が弾き出せたのですが、最後の項目が厄介でして・・・」
「何だ、最後の項目というのは?」
 先輩はAのそばにやってきて書類を覗き込んだ。
「何々・・・女性は三十代に入ると一パーセントの者が年を取らなくなり、四十代で五年ごとに、さらに五十代に入ってからは一年ごとに一パーセントずつ増えてくる傾向を持つ・・・何だ、これ?」
 先輩は顔を上げ、二人は顔を見合わせた。
「誰がこんな項目を設けたんだ?」 
「編集長です。みんな出払っている時。僕のそばにやってきて指示を出しました。アンケートに答えてくれたのは二十代から七十代までいるっていうのに、こんなややこしいのを計算で割り出さなきゃいけないんです。二桁の割り算も苦手の僕がですよ」
「・・・」
「三流週刊誌は一流誌の真似しても意味ないんだ。ここが腕の見せ所で読者の興味を引く目玉なんだから、しっかり数字を出しておけって言われました」
「・・・?」
電話

 6年G組担任の本田はほめることで生徒の向上心を引き出そうと常々考えていた。
 ある日、試験の答案用紙を返した後、いい点数を取った生徒の名前を呼んで成績優秀をほめたたえた。
 2科目で100点を取った生徒をいつものようにほめた後、彼は特別に法螺田努の名前を呼んだ。100点に届かなかった生徒をほめるのは久しぶりだった。
「お前の点数もよかったぞ。98点だ。算数ではいつも50点に満たないお前がよくやった。どんな努力をしたんだ? こんな点数先生だってめったに出したことがなかった。もう、先生を超えたも同然じゃないか。はっははは」
 ほめすぎかと思ったが、これをきっかけに彼が本気で勉強してくれるならこれ以上のことはない。

 努は家に帰るとさっそくこのことを母親に報告した。
 母親ののり子は喜びを満面に表した。
「みんなの前で先生がほめてくれたですって?」
 努は頷いた。
「どれ、答案用紙を見せなさい」
 息子の答案用紙を見た後、のり子はさっそく携帯で夫に電話を入れた。
「先生がね。努の点数をほめてくれたんだって。大学の先生になるのも夢じゃないってみんなの前で言ってくださったみたいよ。・・・うん、いつも算数では10点や20点しか取れないあの子が98点取って帰ってきたの」
「・・・」
「今夜はごちそう作るから早く帰ってらっしゃいな」
 吹男は苦笑しながら電話を切った。
 ひといきついてトイレに立ちながらつぶやく。
「まさか、お赤飯で祝おうってんじゃあるまいな・・・」 
 席に戻ってくるとまた携帯が鳴った。
 何だ? 途中で自分に何か買い物させようってんじゃあるまいな・・・と顔をしかめながら携帯を取り出す。
 しかし妻からの電話ではなかった。
「おぅ、どうした? 久しぶりだな」
 電話をよこしたのは学生時代からの友人だった。
 彼には学業でいつも先を越され、女でもことごとく先に手を出された。会社への就職でも一流と二流と差をつけられ、いい記憶などひとつもない友人だが、気がつくと長続きしている友人の一人になっている。
 彼からの電話は、久しぶりに飲まないか、との誘いだった。
 吹男は顔を曇らせた。この前飲んだ時は悪酔いして帰りに途中で吐いた。出世でも差をつけられたのを知らされたからだった。
 誘いに乗る気などとてもならない。
 どう断ろうか考えているうち、ついつい切り出してしまった。
「うちの倅がね・・・試験で学年トップの成績を取ったってんで、女房のやつがまっすぐ帰ってこいってうるさいんだ。・・・ああ、2科目で100点、ほかの科目が98点だったそうだ。先生からも末は博士か大臣かってみなの前でほめてもらいながら答案用紙を返されたそうだ。・・・ああ、今日は悪いな。今度誘われた時は必ず付き合うからさ」
 吹男は電話を切った。もうこの友人と酒を一緒することはあるまいと思いながら・・・。

友人のラッキーセブン
 智也の家に高校の同窓が顔を出した。
 親たちは出払っている。智也は友人を部屋にあげた。缶コーヒーを出してやりながら訊ねた。
「ここまでやってくるなんて何年ぶりじゃないか。辺鄙なところだ、と俺の家には寄り付きもしなかったのにどういう風の吹き回しだ?」
「部屋はどうなってるんだ?」
「部屋? 俺のか?」
「お前の部屋じゃないよ。また出戻ってくるんだってな?」
「何だ、妹か。そんな話、誰から聞いた?」
「彼女の友人だ。今もずっとホットライン保ってる。高校時代、地獄耳のヤスと言われてたのを覚えてないのか?」
「・・・」
「すっぽんのヤスとも言われてた。これで何度目だ?」
「あいつ、もう四度・・・ん? 何が訊きたい?」
「つまり、道も半ばを過ぎれば早い、ってね・・・俺は今も待ってるわけさ」
 ようやく波長が合ってきたとばかり智也は言った。
「妹の出戻りをか?」
「ああ。そして俺のラッキーセブンも近づいたようだ」
「セブンだ!?」
 智也は呆れた顔になった。
「高橋、お前なあ・・・あいつはもう次の相手もちゃんといて、じきにまた東京へ出ていく身なんだ。お前があいつを好きで、高校時代にはあいつを誘ってデートなどしたりしていたのも知っている。しかし、それはあいつが初心な女だった頃の話だ。しかしそんな妹はもうどこにもいない。今のあいつは金の話しかしない我利我利亡者になっちまってる。いい加減あきらめた方が身のためじゃないのか」
「金か・・・?」
「ああ。出世魚じゃないが、あいつは再婚するたびに、相手の財と年齢の桁を上げてきてる。今度の相手は60代だと聞いたよ」
「ほほう・・・」
 友人は感心して見せた。
「このままいくと・・・七度目の相手は80代ってことになるじゃないか。ひょっとして、エレンはやっぱり俺のこと好きなのかもな・・・! 彼女は俺に約束したんだ。七回結婚して亭主が死ねば俺と一緒になってやってもいいって言ってたんだからな」
「・・・」
 友人は智也の肩を思い切り叩き、愉快そうに鼻歌交じりで引き上げて行った。 


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