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ひでの創作集
掌編を中心に書いています。
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些細なできごと
 友達と遊んだ帰り、休日の電車は混んでいた。と言って朝の通学時のラッシュのような混みようではない。
 次の駅で乗降客が入れ替わった時、中学生の宗太はすばやく席を確保した。ホームから乗り込んできた客は増え、車内はだいぶ混んできた。席に座った乗客たちの前に吊り輪を握った客がずらりと顔を並べた。
 宗太の前には老人が吊り輪を握って立った。
 そこは出入り口だからこっちに来なさい、と老人は家族をそばに呼びよせた。老女と小学校低学年くらいの女の子二人である。おじいちゃんらと孫の関係であろう。
 おばあちゃんらは人の合間を縫ってこっちにやってきた。宗太はまん前から彼らに見守られる格好になった。
「あと少しの辛抱だからね。がまんするんだよ」
 立っているのもつらそうに思えるおばあちゃんが少女らの身体を気遣うようにしながら、ちょっとねめつけるような目を宗太に向けてきた。
 彼女の表情にあおられ、宗太はおばあちゃんに席をゆずるべきかどうかを考えた。これから先はどんどん混んでいく。ゆずれば自分はあとしばらくは立ちっぱなしになるだろう。今日は動き回ったので疲れている。しかし、疲れていると言っても少年の元気な身体なんだかろゆずるべきなのだろう。
 決心して、宗太は老人に声をかけて立ち上がった。
 おばあちゃんはていねいに礼を言って少女らをそこに詰め込むように座らせた。
 次の次の駅で老人の家族はおりていった。おりていく時、宗太の前をふさぐ格好でいそいで出入り口に向ったので、その席には別の若い者が座った。
 杖をついた老人らが乗り込んできて彼の前に立った。八十年配でやっぱり辛そうにしていたが、彼は携帯を取りだし知らぬふりしていじくりだした。そのうち、携帯をしまって眠り始めた。
 客の乗り降りは続いたが、僕が降りるひとつ前の駅まで老人らはそのままだった。
 老人らは何やらぶつぶつ言いながら電車をおりていった。
 あの時、あの席に戻れていたなら、自分は再びあの席をこの老人にゆずっていただろうか。おばあちゃんにゆずったつもりが元気そうな少女らに座られたのでちょっぴり気分を害した。だが、彼らは明るい会話を始めたのでこっちの気分はすぐにほぐれた。
 やっぱり彼らにも席をゆずっていたに違いない。どうしてあの人たちはあの席を自分に戻してくれなかったのだろう。席をゆずってもらったありがたさを考えるなら、それしきのこと、造作もなくできたはずだ。それなのに、あとのことは知らないとばかりに、家族たちで電車をおりていった。
 そんな思案などしながら、宗太は電車をおりていった。
 三年後、宗太は電車で通学するようになった。彼は目の前にどんな老人や子供が立とうが自分の確保した場所を譲らない高校生になっていた。


今日の名曲 Sungha Jung- 君のHotel California 
(若い頃、この曲の持つやりきれないようなユーウツさが好きだった。Sungha Jungはすばらしいギターマンだ)





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