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ひでの創作集
掌編を中心に書いています。
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電話

 6年G組担任の本田はほめることで生徒の向上心を引き出そうと常々考えていた。
 ある日、試験の答案用紙を返した後、いい点数を取った生徒の名前を呼んで成績優秀をほめたたえた。
 2科目で100点を取った生徒をいつものようにほめた後、彼は特別に法螺田努の名前を呼んだ。100点に届かなかった生徒をほめるのは久しぶりだった。
「お前の点数もよかったぞ。98点だ。算数ではいつも50点に満たないお前がよくやった。どんな努力をしたんだ? こんな点数先生だってめったに出したことがなかった。もう、先生を超えたも同然じゃないか。はっははは」
 ほめすぎかと思ったが、これをきっかけに彼が本気で勉強してくれるならこれ以上のことはない。

 努は家に帰るとさっそくこのことを母親に報告した。
 母親ののり子は喜びを満面に表した。
「みんなの前で先生がほめてくれたですって?」
 努は頷いた。
「どれ、答案用紙を見せなさい」
 息子の答案用紙を見た後、のり子はさっそく携帯で夫に電話を入れた。
「先生がね。努の点数をほめてくれたんだって。大学の先生になるのも夢じゃないってみんなの前で言ってくださったみたいよ。・・・うん、いつも算数では10点や20点しか取れないあの子が98点取って帰ってきたの」
「・・・」
「今夜はごちそう作るから早く帰ってらっしゃいな」
 吹男は苦笑しながら電話を切った。
 ひといきついてトイレに立ちながらつぶやく。
「まさか、お赤飯で祝おうってんじゃあるまいな・・・」 
 席に戻ってくるとまた携帯が鳴った。
 何だ? 途中で自分に何か買い物させようってんじゃあるまいな・・・と顔をしかめながら携帯を取り出す。
 しかし妻からの電話ではなかった。
「おぅ、どうした? 久しぶりだな」
 電話をよこしたのは学生時代からの友人だった。
 彼には学業でいつも先を越され、女でもことごとく先に手を出された。会社への就職でも一流と二流と差をつけられ、いい記憶などひとつもない友人だが、気がつくと長続きしている友人の一人になっている。
 彼からの電話は、久しぶりに飲まないか、との誘いだった。
 吹男は顔を曇らせた。この前飲んだ時は悪酔いして帰りに途中で吐いた。出世でも差をつけられたのを知らされたからだった。
 誘いに乗る気などとてもならない。
 どう断ろうか考えているうち、ついつい切り出してしまった。
「うちの倅がね・・・試験で学年トップの成績を取ったってんで、女房のやつがまっすぐ帰ってこいってうるさいんだ。・・・ああ、2科目で100点、ほかの科目が98点だったそうだ。先生からも末は博士か大臣かってみなの前でほめてもらいながら答案用紙を返されたそうだ。・・・ああ、今日は悪いな。今度誘われた時は必ず付き合うからさ」
 吹男は電話を切った。もうこの友人と酒を一緒することはあるまいと思いながら・・・。

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