google-site-verification: google3493cdb2db9edecf.html
ひでの創作集
掌編を中心に書いています。
スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
防犯キャッシュコーナー
 自動ドアが開き、
「いらっしゃいませ」
 女のきれいな声が流れた。
 ややあって、女の声は続いた。
「当キャッシュコーナーはお預け入れおよび通帳の記帳はできませんのでご了承ください」
 中に入ってすぐの場所に立ち止まっていた細身で背のスラリとした人物は、アナウンスが終わるのを待って機器の前に進み出た。そこで一瞬小首を傾げた。
 機器の前に立っても操作画面は立ち上がらない。黒いままである。両側面から放たれているマメ球の明かりがその画面を照らしていた。
「こちらをお向きください」
 上方から女の声がして人物は顔を上げた。
「サングラスを外してください。操作画面が立ち上がりません」
 人物はまたも首を傾げたが、やむなくサングラスを外した。サングラスの下から切れ長の大きな目が現れた。
 それと同時に操作画面に明かりが入った。人物の目にかすかな笑みが漂った。
 人物は取り出したメモ用紙を手にキーボードに右手を伸ばした。キー操作は順調に続いたが、パスワードを入力した段階で操作はストップした。
 上方から女の声がした。
「手袋をお脱ぎください。手袋のままではパスワードを認識できません」
 人物は軽くため息をもらした。だがここに至って操作を中止するわけにいかない。ためらいつつ手袋を脱ぎ取った。するとその下から白くきれいな手指が現れた。操作は継続し、お金の引き出し画面になった。
 金額を打ち込むと、機器はお札を数えだした。その金を押し出す直前、再び女の声がした。
「帽子とマスクをお取りください。こちらをお向きください。証明写真を撮ります。それがプレゼントです」
 右手でめだし帽が取られ左手でマスクが外される。その下からきれいな女の顔が浮かび出た。
 女がこちらを向いた瞬間、フラッシュが焚かれた。
 女はめだし帽もマスクも放り出し、あわてて外へ飛び出していった。


「以上、我が行が今後推進したいキャッシュコーナー防犯対策の一端です」
 モニターテレビの横に立った行員の説明に上司の一人から質問が飛んだ。
「うちにあんな美人がいたかね?」
「いいえ、プロのモデルを使わせていただきました」
「カメラ目線まで送ってくれて、じつに愉快で気持ちのよい映像だが」 
 別の上司からも質問が飛んだ。
「君はこんなに素直でまぬけな詐欺グループがいると思うかね」
「しかしだね」別の上司が口を挟んだ。「こういうキャッシュコーナーがあっても悪くないと思うな僕は」
「道楽でやるんじゃないよ、君。こんなの導入したって採算ベースに乗るとは思えないじゃないか」
「いや、一概にそうは言えない」
 別の者が切り出して場はすったもんだ混乱しだした。時間と経費のムダという結論に至った。
 その場から抜け出た行員はため息をつき、汗を拭いた。
「やれやれ、既成概念にとらわれず思い切ってやれと言っておいて、結局はこうだ・・・・・・!」


スポンサーサイト
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
この記事へのトラックバック
copyright © 2005 ひでの創作集 all rights reserved.
Powered by FC2ブログ.
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。