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ひでの創作集
掌編を中心に書いています。
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自転車泥棒を見つけて
  街に出かけ、遠くからやってきた女友達と会った。あらかじめ電話をもらっていたのだ。
 昔、男二人で彼女の家に泊まりに行ったことがある。早稲田の眼鏡店に彼女の新調した眼鏡を取りに行ってあげたこともある。
 しかし、男と女の関係にはなれなかった。だから細々と続く交流なのかもしれない。
 東京に出てきたのは何年ぶりだという。会うのは久しぶりだったし、話も弾んだのでビールを飲んだ。気分よく酔った。次はいつ会えるかわからない。どこかで本格的に飲んで別れよう、と誘ったが、彼女は帰りを急いでいてそれは次の機会にしようとなった。
 彼女とはキー駅のホームで別れた。晩年期の男女の交流はあっさりしたものである。彼女は振り返らないで駅の構内へ消えた。
 気分はよかった。旧友と会えば、若かりし頃の懐かしい時間を取り戻せる。少しのビールでこれだけ酔えたのはそのせいだったのであろう。
 電車をおり、いちばん最後尾からエスカレーターに乗った。改札口に達した時、ほとんどの者が改札口を出てしまっていた。
 彼は改札口を出て、外のロータリーに向かう階段を注意深くおりていった。酔っているから足元は気をつけねばならない。と思っているそばから、誰かがどんと彼の背後からぶつかってきた。彼はよろけた。かろうじて立ち直り、相手を見ると、階段を斜めに少年が走り下りていく。路上に達して角を曲がり、すばやく姿を消した。
 彼は嘆息する。
 無神経なものである。ぶつかっておいてこちらを振り返ろうともしなかった。
中学生くらいだろうか。携帯を耳にあてがい、相手と元気よくしゃべり続けていた。
 彼は路上に達し、少年が姿を消した方向に曲がった。自宅はこっちの方向にある。
 風がひどかったせいか、自転車が幾台か倒れ、道路を歩きにくくしている。一台なら起こしてやれるがと思いながら、何もせずそこを通り過ぎる。自転車を引っ張り出している者も自分の自転車以外は気にもせず、鍵をはずして走り去った。
 倒れた自転車で邪魔な通りをゆるゆる歩いていくと、自分の自転車のところにたどりつき、携帯で話し続けている少年がいる。服装の感じから、さっきの少年とわかった。
 彼は携帯の相手に向けて何やらしきりに弁解している。とうとう身体と顔の向きを変えて怒り出した。
 彼は何気に少年の自転車を見た。後輪のところから水色のキーホルダーがぶら下がっている。
 水色だ。やっぱり、水色って多いんだな・・・。
 通り過ぎようとした時、俺はそんなの知らないよ、という声が耳に入った。彼はふと足を止めた。見ているうち、色だけでなく自転車そのものも似ていることに気付いた。
 彼は自転車のそばに寄った。友人から安くわけてもらったものだから、車体番号なんてのは覚えていない。しかし、見れば見るほど家を留守していたおりになくなった自分の自転車に似ている。
 背後に人の気配を感じて少年が振り返る。携帯をズボンに押し込んで、自転車のハンドルに手を置いた。
「何だよ、おじさん」
「この自転車だけど・・・・・・」
 彼が訊ねかけた時、いきなり自転車の後部を足にぶつけられた。ひるんだ一瞬のすきに少年は自転車を押して逃げ出した。体勢を立て直して追いかけようとした時、少年はもう数メートル先で自転車にまたがっていた。
「待てーっ!」
 ぶつけられた足をひきずって追いかけたが、少年の逃げ足はすばやかった。向こうの路地を曲がって消えたところで、彼は少年を追いかけるのをあきらめた。
 立ち止まってハアハア息をついた。わずか十数メートルしか走っていないのに、息が切れそうなほど心臓は鼓動を早くしていた。
 最初のとっかかりがまずかった。ああいう時はああなることを想定し、まず自転車のどこかをしっかりつかんでおくべきだったのだ。
 しかし、いくら反省しても後の祭りだった。しょぼくれてつったっていると、後ろから自転車を引いてやってきた四十年配の男子が、おじいさん、どうかされましたか? と声をかけてきた。
 いや、何でもありません、と答えると、そうですか、と笑顔をよこし彼はさっそうと自転車にまたがって走り去った。
 四十男から見てもおじいさんか・・・・・・あの男子なら難なく少年を捕まえていたことだろう。
 酔っていたとはいえ、衰えた自分の身体が彼は恨めしかった。先月、古希を迎えた。一人歩きはなるべく控えるように、と子供たちからは言われた。
 むしろ、襲われてズボンの財布を奪われなかっただけでもよかったのかもしれぬ。
 彼はそろそろと自宅に向けて歩き出した。それにしても、自宅まで歩き帰るのはたいへんだ、また、自転車を買おう、と自分に言い聞かせながら。


さて、今日お届けする一曲。初代御三家の中で好きな歌手は舟木一夫。この曲が一番好きである。
  

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